『彼らは唯の夢』装画製作
風野湊さん(呼吸書房)の小説『彼らは唯の夢』装画を担当いたしました。
製作過程公開のご許可を頂いたので掲載します。
公開中の絵を装画として使用したいということでご依頼を頂きました。既存の絵に関しては、お贈りした絵を除き基本的にお貸し出来ます。
今回は新たに描き起こすことになりました。
元となった絵と似たテイストで、淡く明るい色づかい、飛翔する鳥の群れの水彩画、背景は白、余白の充分にあるものというご指定でした。
お送り頂いた装丁イメージ画像と、収録作品を拝読しての印象、元の絵の要素も組み込んで起こしていきます。
◆構図決め〜彩色
鳥の配置を考えていきます。群れがどこに向かっているか、今まさに飛び立った群れなのか、移動中なのか、旋回しているのか、どんな状況の空を飛んでいるのかなど、場面を膨らませていきます。
作品のイメージから「気ままに飛ぶ群れ」「飛び立つ群れ」「鋭く横切る群れ」の3種類に絞りました。
夢を元に書かれたお話でしたので、「夢」という言葉そのものも一つのテーマとしています。浮遊感、幻想、淡さ儚さなどに加え、夢から覚めた人が寂しくならないような絵を目指します。
目覚めてみて、良い夢であれば余韻に浸れるような。怖い夢であれば寄り添えるような。忘れてしまったならば空白を満たすような。
抽象的な鳥の絵になるので、彩色時も実際の鳥の色合いというよりは、作中に感じた色やテーマから外れない色を選んでいきます。
朝日を受けて飛び立つ群れが、光や空、田畑、木々や森、海の煌めきを受けて染まっている。カーテン越しに幻が過ぎる。欠片を寄せ集めるつもりで作業しています。
3種類製作した中から最終的に1枚をお選び頂きました。
製作期間は約2週間。
元となる絵があったため仕上がりの形は既にあり、何をどのように表現していくかだけに集中して作業出来ました。
公開されている絵そのものの使用のご相談や、公開されている絵のテイストに寄せてくれというご相談は大歓迎です。
自分自身もよく夢日記をつけており、また他人の夢日記も興味深く拝見していたこともあり、いち読者として完成を心待ちにしながら描かせて頂きました。夢が形を持って手に取れる本として存在する、素敵ではないですか。
作品ページ→彼らは唯の夢(BOOTH/呼吸書房販売部)
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