2-6月

2017年11月10日

 黄鴬睍睆(うぐいすなく) 

-17.02.11

0.花守の子守唄
花壇の縁石に腰掛けて成長を見守っています。カラコロと竹が鳴るような足音で、花々は午睡につくといいます。

1.柳の下の染色屋
オオオオヤナギの奥から覗く顔と目が合えば挨拶される。滴る木漏れ日を集めて衣を染める。雨の日は休業らしい。

-17.02.12
2.天井花壇の手入れ人

天の天井から咲く花がございまして、彼はその手入れをしているそうです。良い空の色に染まりなよと、朝も夕も様々の空を、花たちに見せるのです。


--玄鳥至(つばめきたる)
-17.04.09
3.白昼の水辺の散歩者
草がそろそろと鳴く。空にひかれた薄い雲に暈されて、どこにいるのか分からない太陽。水辺を魚が散歩していた。 籠など持たずに寄っといで。水中の静けさに足を踏み入れる。


--麦秋至(むぎのときいたる)
-17.06.04
4.早起きな宿の主人
朝日からちょろちょろと流れてくる雫が、今日もインクのように川に混ざって裏庭にたどり着きます。おはよう、ようこそいらっしゃい。夜明けを迎える宿の主人は、空に光が満ちるまで、ひと雫、ひと雫に丁寧に声をかけます。

5.縁の下のエンターテイナー
縁の下の穴をくぐると歓声が上がる。真っ暗な舞台に熱気が吹き込む。このときを待ってたんだ。大きくお辞儀をして、背負ったライトに光を入れて、会場をもっと煽って、パフォーマンスを始めるのさ。......床の下が賑やかな日は、寝転がって耳を澄ませてみよう。

6.届けものを音で繋ぐ裏庭配達屋
荷物をよいしょと背負って配達屋さんは出かけていきます。道中歌いながら歩くので、人々は歌声が近付くとどことなくそわそわするのです。裏庭からのお届けものはメロディーと一緒に棚にしまわれ、棚を開ける度に聞こえるメロディーでまた浮かれてしまう。お返しは何にしようかな。

7.泡食む漂浪者
大地が呼吸をする度にぽこぽこと生まれる泡を食む。体はどこまでも軽くて、渡る風に乗れば空も飛べると思うんだけれど、やっぱり地面が好きでここに留まり続ける。


--腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)
-17.06.11
8.低木から注ぐ虹読み
低木を覗き込むと、光が溢れていた。膝をぶつけないようにこんにちはと挨拶をすると、光の中の者も恭しく返してくれる。風がそよそよと吹くと枝の上で共に揺れていた。一心に虹の色を読んでいる。しばし涼しいこの場に留まろう。


--乃東枯(なつかれくさかるる)
-17.06.24
9.虹を背負うカタツムリ
雨上がりに顔を出すカタツムリ。光の輪をくぐり、目を伸ばしたり引っ込めたりしながら、ほうぼうにお日様が射すことを伝えるのだそうです。通った後には虹の道が敷かれ、カラフルな絨毯となります。雨上がりのお散歩道にぴったり。

10.土の中の箱庭屋
音の庭を持つモグラがおります。背中の庭で音を育てるのです。植物が水を飲む音を聞いては水を満たし、寝返りを打った天井の人がやがてまた寝息を立てると心地良い芝生を生やし、光の中で小鳥が騒ぐと見ることは叶わない陽光を降らせます。音が育てる箱庭は、土の中でひっそりと組み立てられます。

11.主賓を待つ水晶オルガンの歌声
道具小屋から水晶オルガンの声が流れて来る。裏庭を手入れする者が来なくても水晶は気ままに歌っている。手入れされた姿で腰を下ろしている道具たちが、幽玄な地中の歌を聞いている。

12.花背負う回収者
散った花びらの回収者。裏庭では生も死も上手い具合に循環します。回収された花びらは、砂糖漬けになったり、出汁を取ったり、妖精に習った術で簡易翼として編まれたりするようです。過ぎた日々も彩りを失いはしないものです。


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