10-11月

2017年11月10日

--鴻雁来(こうがんきたる)

-17.10.08
23.赤い実に紛れるリボンの端っこ
リボンの端っこを箱に入れたままにしておくと、たまに抜け出してお仕事をしているらしいのです。細かな木の枝が上を向くように導いて、折れないように囲いを作ったり補強します。赤く輝く実を探して、冬の風に飛んで行かないように赤い糸で結びます。たまにキラリと枝が光るのは、彼らのお仕事の輝き。

24.認識の外の可憐な鏡
あなたを映さない鏡が、裏庭の物置に置かれていました。歪んだ小さな鏡面なので、顔を映そうとも思わないかもしれません。置いた本人も鏡であることを忘れて通り過ぎるようです。だから映らないことを気にする者がいないのです。その鏡の前に、人は一人もおりません。

-17.10.09
25.いつからか住み着いた魔法生物
てくてくと歩いて花に水をやる水鳥型じょうろ。段差を器用に上り下りしながら裏庭を回り、一つ一つの植物にぺこりとお辞儀。優雅な魔法生物です。変化する四季を幾つも見送ってきました。

26.鈍色の守護者
甲冑を纏った小鳥が庇から覗いています。小さな守護者は鈍い光を散らしながら木々の間を飛び回り、裏庭の小さな空に遊びます。凛々しい小鳥が愛でる空を、裏庭の住人も楽しげに見上げます。


--楓蔦黄(もみじつたきばむ)
-17.11.02
27.かさかさの手足の抜け殻
また会おうと言って夏に別れた抜け殻が、約束を守ってやって来た。どこで過ごしたのか、これからどこへ行くのか。少しだけ話して、あとは枯葉が走る音に耳を傾けるだけ。目を閉じて、夏を思い出す。

28.朝の特等席を探す影
朝靄の中に佇む影がある。おはようと話しかけるでもなく彼の隣に立つと、舞台の幕が上がるように靄が晴れていく。スポットライトを浴びるように朝日を受ける。影はいつも朝の特等席にいて、日が昇りきる頃には姿を消している。

-17.11.06
29.地の星を繋ぐ魔法生物
地に星座を贈る、八つ足の生物。長く雨が降らない日が続き、植物も地面も枯れる頃。乾燥した地面のひび割れを繋いで、名前をつける。日照りに天を仰ぎ涙する生命が、地から溢れる星明かりにほろりほろりとまた涙を流せば、少しだけ地面が潤う。

30.月の落とし子、裏庭に隠れ住む幼獣の一匹
月のかけらと呼ばれる卵から孵った幼獣は、眩しいその鱗を隠すために、真っ黒いフードを手放しません。風の悪戯で衣が取り払われると、影を食い尽くすほどの閃光が地を走るそうです。

31.見守る海生まれの辰
シーグラスを混ぜて作った盛り土の上。うっかり海からついて来てしまった辰の子供は海想う。一面の海の溢れる輝きをいつも心に秘めながら、裏庭にぽつんと拵えられた半球を慈しむ。


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