6.その後

2017年07月24日

   2015-04-17

 のもすとカタは今日もゆらゆらと揺れています。雨上がりを待っているのです。
「のもす、鳥が飛んだよ」
「そうだね、じき晴れるね」
「雨雲一つ食べてみようよ」
「そうだねカタ、羽が生えたら、きみはそれを叶えるといいよ」
「のもすは雨雲の味を知っていそうだね」
「きみが食べたら教えるね」
 花蛇のもすと、いつまでも羽の生え揃わない鳥の雛カタは、遠くの山をみつめています。
「カタ、きみ、夢を見ているの」
 カタは開ききらない目でのもすを見て「起きているよ」と言いました。のもすが何かを言い出すのを待って息をつめてみましたが、やがてふーっと吐き出しました。
「のもすは眠らないものね」
 また一息、今度は短めにはいて、「のもす、夢を見ているの?」聞き返しました。
 大きなのもすの背を登って、花蛇の頭の上で、カタは天を見上げます。今日もそのようにしていましたが、たまに耳元で囁くのです。
「大きく大きくなったら、翼でのもすに日陰を作ってみたいんだ」
 のもすは風に合わせて体を揺らします。カタはそろそろ眠るようです。日の下で。

   12/24、春の雪のこと
   15-12-24【07:59】

「ひっくり返って世界を見てごらん」
 のもすは仰け反りながら神妙に勧めました。雪の少ない年のことです。気温はだらだらと上がり下がりし、狂い咲きの桜やら、芽吹いたばかりのような柔らかい草が、朝露を抱えています。クリスマスの前の日の今日、ソリを滑らせる雪が無いことを、カタは心配しておりました。
「ソリは雪上だからいいんだ。トナカイを解雇して軽トラックを借りなければ」
 のもすも、それは大変だなと言って空を見ておりました。二匹だけでなく、草原の者がみな空を見上げ、雪の気配を探っているようでした。
 のもすの姿を真似て、カタはひっくり返って空を見てみました。
 雪を待つ草原。息をつめる生物たち。朝の光が体に浸透してきます。毛の生え揃わない鳥の子が、脚の間から空を見て、バランスを取れずでんぐり返りました。雛が転がりかさりと一つ、音を立てました。
「どうだい、カタ」
「雲が雪のようだ」
「そうさ」
 のもすも長い蛇の体でアーチを作りながら、地に頭をつけて一言。
「今日はこのようにして過ごそう」
「トナカイも安心だね」
 頭に血が上り、あたたかな気分になるのでした。
「のもす、やっぱり、だめだ! でも、トナカイも解雇しちゃだめだ!」


..end


-.のもすとカタについての呟き

   12月27日-1月2日

■ノモスはギリシア語で法とか掟を言います。でもそちらは特に意識はしていません。突然降って沸いたものがたまたまその名前だったのです。でも、何かの縁、少しずつ語の意味に馴染ませていきたいです。
12/29 0:58

■のもすが平仮名なのは、最初浮かんだ時に地元の方言っぽいなーと思ったから。音を伝える事は出来ませんが、のもすの人から雪の里を感じて下さい。
12/29 1:00

■カタはつるっつるの鳥です。鳥肌たっているよとか、目が透けて見えるよとか、気持ち悪いです。でも可愛いんです。因みに羽はいつまでも生えません。
12/31 11:55

■まだ世界は彼らの周辺しか決まっていません。そこはどこまでも続くくさはらという事と、沢山の生物がいる事と。それくらい。
12/31 11:58

■この世界は現実世界です。私がより日常を描きやすい形の日記の場という意味で、現実です。それが世界のきっかけです。
12/31 12:03

■のもすとカタは私の中では自然な存在ですが、それゆえに今はキャラクターが定まっていません。アウトラインはあるけれど、これから徐々に煮詰めていきます。
12/31 12:06

■のもすは蛇です。鳥雛のカタを食べたくならないのでしょうか。
12/31 12:08

■カタも成長したらのもすを食べちゃうかも知れません。
12/31 12:09

■でも大丈夫、それを含めて二匹の穏やかな日々です。
12/31 12:09

■のもすは花蛇なので、地面から栄養を取る事も出来ます。
12/31 12:10

■のもすは成長すると(偉そうでダンデイで紳士な蛇ですがまだ伸び時です)最終的に立ち木になります。
1/17 9:59

■木になったらもう花蛇じゃないですね。まあ、猫だって猫又になるので、似ています。
1/17 10:01

■カタは沢山のものになる可能性を秘めながら、何にもなりません。ちょっと慎重(臆病とも)で優しい、小さなヒナのままです。
1/17 10:03

■カタの名前はひっくり返すと鷹になりますね。ひっくり返らないと鷹になれないカタ。
1/17 10:05

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