7-10月

2017年11月10日

--半夏生(はんげしょうず)

-17.07.02
13.季節に挟められた思い出
季節の繋ぎ目に、薄い紙が挟まっている。本のページを捲って落ちる押し花のように人や動物たちの目をひいて、過ぎた季節を小さな風に変えた。忘れられない思い出なら、また次に時期が巡り来るまで挟めておこう。

14.角持つ電光ライオン
雷を集めてはぴっかりと光るライオンがおります。雨の日に外に出掛けてそわそわと雷雲を待ったり、晴れた日に草の間に座って電気虫を止まらせいるようです。蛍と友達になろうと水辺をうろつく姿も見られるとか。大きく口を開けて鳴くと、辺りの電灯がチカリと返事をします。

--蒙霧升降(ふかききりまとう)
-17.08.20
15.時空を渡る絡繰の幼龍
時空を超える絡繰の龍は、幼いうちは花から花を目指して渡りの練習をするようです。細い糸で繋げられた胴体で、小さな花の間を自在に動き回ります。花から伸びる虹がきらりと光ったとして、捕まえることは難しいでしょう。裏庭で見られる魔法現象の一つです。

16.木の葉の翅持つ小猿
木から木へと、木の葉を翅として借りた妖精猿が飛び回ります。木の葉に声をかけて、彼らの調子を見ているようです。一通り木々の健康をチェックしてから、小猿は枝を揺らしてざあざあと鳴る音で音楽を奏でます。枝は鍵盤となり、高低の差が緩やかに繋げられていきます。

17.草の海の風船鳥
草の背丈の少し上を、しゃらんしゃらんと音を立てながら浮遊する風船鳥。軌跡は草が揺れるのを邪魔することはありません。草の海に漂う浮き草。魔法生物の一種です。

18.籠の中の守護者
窓辺に置かれた二尾の獣。要石を守る役目を持つ。普段は籠の中で詩を吟じているが、石に近付く者があれば格子を蹴破り食いかかる。要石には座標が刻まれており、空間を固定している。

19.白昼夢の手帳の持ち主
草陰に寝転び昼間の夢を紡ぎ出す者。昼の夢は昼に書かれる。手帳のページは風に乗り、うたた寝している誰かの元へと飛んでいく。紙片を拾い上げたなら、本を読むように夢を見ることが出来る。ひだまりの中に、もう少し留まりたくなる。

--水始涸(みずはじめてかるる)
-17.10.03
20.種の芽吹きを見守る絡繰の者
なかなか芽吹かない種を見守っている。きっと大きな大きな木の種だろう。種の芽吹きを待つ者も、長いこと同じ場所に留まり続けているという。長い長い寿命を持つから、この者になら、芽吹きまでの時間もほんの僅かの時間だと感じるかもしれない。朝から夕まで待つくらいの。


21.宇宙服を着た来訪者
空からやって来て、いつも決まった一つの石を撫でていく、変わった宇宙服を着たテンがおります。石は撫でられるごとにほんの少しずつ窪んでいって、今では椅子のようになっています。テンも空に帰る前に座って行くことがあるそうです。雨が降ると薄っすら水を張るので、鏡の代わりにするのだとか。


22.幾何学の家に住まう蟲

葉脈をするすると抜いて巣を作る蟲がおります。巣にはたくさんの葉っぱの芯が転がっているようです。幾何学と光が織り上げた球は、目が眩むほど奇怪なオブジェとなることでしょう。その中で過ごす彼らの目に映る世界も驚きに満ちたものでしょう。巣の壁越しに見つめ合って情報を交換出来たなら幸運です。


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