5.次の年
12.01.01新年のあさの事
2012-01-01
「あけましておめでとう」
「あけましておめでとう。良い新年の空だよ、カタ」
「本当に、そうだね」
のもすとカタはしばし言葉を休ませ元日の空気を吸いました。空は実験ビーカーで見たように美しい白。空気は昨日の宴会の音楽の余韻から新しい一年への震えにつながってびりびりと電気を発し、心は想いで溢れ、泉のように澄みきって。
「ああ、新しい年だ」
「ああ、また始まっていく」
そうして二人はお昼までぼんやりするのです。
いつもと同じ、ちょっとだけ厳かな、一日の始まりです。
2/5、ある雪の日の独り言を拾う
2012-02-05
きみは強い。
大丈夫。
12.05.12平原のこと
2012-05-12
白い草原も緑の地平も、
黒い凪も、見上げた空も。
一日に安らぎの言葉、ありがと、お休みなさい。
のもすとカタが見続ける平原。
「世界が見えるよ」
「ぼくたちは神である」
「我々は卵である」
「なにも見えないよ」
「ここは平原である」
「どこまでも続く平原である」
「神様はさぞ寂しかろう」
12.09.10、空を求めること
2012-09-10【曇り空の下、土を泳ぐような午前3時】
「のもす。きみの高い目線の世界を教えて」
その日、カタは真剣でした。背伸びしては両足を震わせ、羽の生え揃わぬ腕を不器用にパタパタさせ。
「君はどこへ行こうとしているんだい」
真剣さに追われて崖から飛び降りやしないだろうか。のもすが心配します。この子はあの気だるく優しげな雛鳥か。のもすは揺らぎます。大きな翼で滑空する成鳥のカタを想像して。
「教えてほしいんだ」
わかったよ、のもすは言いました。
君が自分に近付こうとしている。君が自分を越える日が来る。蛇を恐れぬ雛が空の王になる。それは、ただの想像だけれども。
「カタ、私はときに、ひどく小さくもなるんだ」
地面に長く這うように伏せたのもすは、カタの目線より少しだけ下に、殆ど同じ高さになりました。
「さあ、おいで。地面でみつめ合ったなら、次は私の空を教えるよ」
頭に雛鳥を乗せて、花蛇はゆっくりと頭を空に伸ばします。
「落ちるんじゃあないよ」
「のもす。ぼくは空を飛びたい」
カタがぽつりと秘密を囁きました。二人にしか聞こえない、のもすの耳もとで。